来年度の課題

深く反省しなければならないことができた。

今回の1回生の「環境生物学I」の試験で、白鴎大学の山野井先生の研究をなぞった問題を出してみた。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbe/59/3/59_150/_pdf/-char/en

設問は「キリギリスの体色は普通緑色だが,まれに鮮やかなピンク色をした個体が見つかる。(1)緑の体色は「顕性」「潜性」「どちらか不明」のどれか。1つ選べ。(2)(1)の回答について,「顕性」または「潜性」と回答した人は、その理由を述べよ。「どちらか不明」と回答した人は、どうしたら判定できるか述べよ。」というもの。レベルとしては中学校理科相当である。もちろん私の講義では「顕性(=優性)」「潜性(=劣性)」は生きていく上での有利・不利とは関係ないこと、誤解を招かないように日本遺伝学会が用語を変更したことを教えている。ただし、ピンクのキリギリスの話自体はしていない。

上記の問題の正解は勿論「どちらか不明」で、判定のためには交雑実験が必要となる。しかし、学生の回答を調べてみたところ,「顕性」と答えた学生が実に70%、「どちらか不明」という正解者が25%、「潜性」と答えた学生が5%だった。そして、「顕性」と答えた学生の大半はその理由として「自然で見られる体色だから」「数が多い」「生きていく上で有利」と答えていたのである。ちなみに上記の山野井先生の論文では、中学生に同様の質問をしたところ「緑が優性」と答えた生徒が75%いたそうである(「劣性」が12%、その他は無回答)。つまり、大学で講義を受けたにも関わらず、「顕性(=優性)」「潜性(=劣性)」に対して誤解したままの学生の比率はほとんど変わっていない訳で、これは明確に私の教え方が悪い、ということである。来年は古典遺伝学の単元をどのように教えるか、授業の組立を根本から考え直す必要がありそうだ。

(2/15) 続報です。この問題(1)の正答率を学科別に計算してみたところ,こうなりました。

環境生態学科(※高校理科での生物選択者は40〜50%程度?)32.1%(n=28)

生物資源管理学科(※同・80〜90%?) 12.5%(n=56)

工学部(※同・ほぼ0%) 57.1%(n=7)

面白いことに、生物が得意な学生の比率が高いはずの生物資源管理学科で正解率は最も低く、3択でランダムに回答した場合よりも統計的に低くなっています。高校までに「なんとなく」身に付いた生物学の知識を一旦ぶち壊すぐらいの勢いで講義しないと効果がないということでしょう。