この大学に来てから早くも5年近くが経過したが、この大学のさまざまなシステムの中で、どうもよくないという印象を強く受けているのが人事だ。大多数の大学と同じように、この大学も正教授だけで人事を行っているのだが、とにかく(私が今まで勤務した他大学と比べて)毎度のように難航するのである。おかげで、定年退職者の後任がすぐに埋まったためしがなく、たいていは数ヶ月の空きができてしまう。当然、その間は他の教員が穴を埋めたり、新任教員に着任早々集中講義をこなしてもらう羽目になったりするので、教員にも学生にも明らかな負担増なのだ。毎度毎度こんなことが繰り返されているということは、制度か体質かが根本的によくないということである。
難航する一つの原因は、やはり正教授だけという比較的少人数の中で人事が行われていることにあるだろう。少人数で議論を進める場合、実質上「全員賛成」に近い状態にならなければ人事を進めることは難しく、一人でも反対者が現れれば立ち往生ということになりかねないからだ。私が過去に勤務した中には教員全員が人事権を持っていた大学もあるが、そういう所では1学部で50名以上が投票を行うわけなので、ほぼ業績の評価のみによる公平な判断が下され、個人的な見解のあれこれはあまり介入の余地がない。今、正教授だけで人事を行うシステムになっているのは旧帝大系の国立大学などに習ったものなのかもしれないが、基本的に公募であり、講座制もない現在の人事の場合、正教授だけが人事権を持つことにほとんど意味はない。ウチは新しい大学なのだから、古い大学が因習として引きずっている変なシステムに囚われることなく、合理的なシステムをどんどん取り入れて行けばよいのにとつくづく思う。