嘘っぽいにも程がある

講義の準備でネットを巡っていたら,水資源機構作製の某ダム(ネット)サイトに,「ダムの目的」としてこんなことが書いてあった。あまりにも事実を無視した文なのでここに引用。

また、川は、たくさんの生き物の生活の場であり、
人々の心を和ます癒しの空間でもあります。
こうした河川環境を維持していくためには、
「いつも川に水が流れている」ことが必要です。

日照りが続いて川の水が干上がってしまったら、
川に住む魚などの生き物は生きていけませんし、
川の近くに住む人々も水源がなくなってしまいます。

××ダムは、川の水が十分にある時にその水を蓄えておき、
雨が長く降らず、川の水が極端に減ったり干上がりそうになった時に、
ダムに貯めた水を川に流して、そこに住む生き物たちや
川の近くに住む人々の水源を守ります。

断っておくが,私は何が何でもダム反対という人間ではない。ただ,私はこのダムの場所をよく知っているから,この文章がおかしいとすぐにわかるのだ。
まず,このダム建設地で,この数十年に生き物が干上がるような渇水があったという話は聞いたことがない。大体,洪水のための流量調整の必要性はあちらこちらで聞くけれども,川の生物の保全のためにダムが必要などという話は,国土交通省の河川管理者だって聞いたことがないだろう。
それから,このダムは現在建設中の主として利水目的のダムなのだが,流量に対して貯水量の非常に大きなダムだ。ということは,完成の暁には水が溜まるまでかなりの時間がかかることが予想される。計算はしていないが,おそらく半年やそこいらでは溜まるまい。その間,計画貯水量になるまで,ダムから下の川の水はストップだ。川の水は無くなるはずなのである。
もちろん,大勢の人が環境負荷が少ないダム運営を試みていることも良く知っている。しかし,何もダムの建設目的の一つに「環境保護」を挙げて,一発でおかしいとわかる文章を HPに挙げることはないじゃないか。「都市部の水資源の確保のためにダムが必要です。できるだけ環境に配慮はしますが,やっぱり水量の低下などの河川環境への影響は免れません。どちらをとるか,国民の皆さんよく考えてください」ぐらい開き直った文にしたらどうだ。変なことを書くと余計にうさん臭いぞ。
追記。計算したところ,最短で77日で満水になることがわかりました。