午前中,見慣れない学生が研究室を訪ねてきた。建築デザイン学科の学生で、卒業制作で,川水を利用した洗濯場(?)を中心とした都市コミュニティ計画を考えているので川の水質について教えて欲しいという。いやもうハチャメチャなプランなのは間違いないのだが,面白かったので(私にとっては一種のブレインストーミングだ)1時間ほど付き合った。何よりも,ハコモノにばかり関心を向けがちな建築デザイン学科の学生が水利用に真面目に関心を持ってくれたという,それだけで嬉しいではないか。
彼が一番心配していたのは,都市部を流れる川が洗濯に使える水質であるかという一件で,水質浄化装置のことなどあらかじめ調べていた。都市河川とはいえ生き物は沢山いるし,濁りと臭いさえなければ洗濯程度には十分でしょう,と言うと「え,そうなんですか?」と驚かれた。都市河川には生き物などほとんど住めないと思っていたらしい。また,その地域全体で洗濯に使う水量が水路から確保できるかどうか尋ねられたが、実際に概算してみて,一般的な水路の流量と比べて微々たるものであることがわかるとまたまた吃驚。まあ,普通の人は川を見て,これで毎秒何リットル流れているかなんて考えないしね。それから,河川から必要な量を取水する伝統的な仕組みや,本川からの逆流を防ぐ仕組み,下水の浄化槽など,県内を歩けばそこらで見られる種々の仕掛けについてはほとんど知らないらしかった。幸い,県内には洗い物などに使われている現役の生活水路がまだ結構あるので,まずはそういうところを歩いて水路の構造を実地に調べておいで,と言うと,早速そうしますとの答え。さてさて,彼の卒業制作はいったいどうなることやら。提出期限まであと4ヶ月足らず、それまでになんとか格好がつくかどうか,センセーはそれを一番心配しております。