巨大寄生虫!?

今日は午後から乗船調査の予定だったのだが、雷注意報発令のため延期。今週はずっとこんな天気なので多分ダメだろうと予想はしていたが、そのとおりになった。梅雨明けの時期は午前中の時間帯に船を抑えておかないとなかなか厳しい。

今書いている論文は既知種の形態に関する短報だが、上位分類群の変更になるかもしれないので関連文献を慎重に調査している。ところで対象種Aは吸虫としてはかなり大きく、全長2cmを超えるのだが、文献に「Aと同亜科の種BはAの10倍以上大きい」という記載があって驚愕した。種Bの記載論文を見ると確かにそう書いてあり、体長の最大値は270mm、体幅50mmとある。吸虫の中には糸のように細長い種もあり、そのような種なら体長270mmもありそうだが、普通のナメクジのような形の吸虫でこのサイズはありえない。これじゃコッペパンじゃないか、と思って宿主は何かと調べるとヘビの一種で、長さ2mぐらいだという。しかも1匹のヘビにそのコッペパンが6個体寄生していたらしい。ますますありえない。しかし、記載論文をよくよく読み進めると、口吸盤の直径は1.2mm, 腹吸盤は1.8mmとこちらは常識的な大きさである。どうやら体長と体幅の計測値に小数点を入れ忘れたらしく、本当は体長27.0mm, 体幅5.0mmだと思われた。それなら種BはAとほぼ同じ大きさになる。しかし、この記載論文を引用した人は計測値が変だと思わなかったのだろうか。

※追記

数年後に別の研究者が計測値の誤りを訂正した模様。しかし、へんな値をそのまま引用している人はなんと原記載者本人でした。いい加減に気がつけよ。