絵で分かる寄生虫の世界

絵でわかる寄生虫の世界 (KS絵でわかるシリーズ)

絵でわかる寄生虫の世界 (KS絵でわかるシリーズ)

届いたので早速目を通しました。まず最初に一つ言っておくと、「絵でわかる」シリーズではありますががっつり字もあって専門性の高い本です。帯紙には「寄生虫学ぼう」とありますが、実際のところ「寄生虫学ぼう」と言った方がはるかにぴったりなので、読者としては大学生以上、特に医学・獣医学部寄生虫を学ぶ学部学生さん向けぐらいの内容です。第3章「代表的な寄生虫の生態と生活環」は、人畜寄生虫に留まらず広く寄生虫の分類を手がけてこられた長谷川先生ならではのボリュームと内容の濃さで、日本語で読める医学・獣医学寄生虫の分類・生活史のまとめとしてはベストでしょう。私でもこの本の3章、特に線形動物の各目の解説は「ありがたや〜」と思います。一般生態学・進化生物学を勉強する学生にとっては、分類学のウェイトが大きすぎるように感じるかもしれませんが,第1章の「寄生適応」に紹介されている寄生虫の呼吸経路の多様性(解糖系→TCA回路→電子伝達系というパターンに当てはまらないものがいくつも存在)などを見ると、寄生虫生態学の文脈で理解する時にはその生物学的独自性をどこまで踏まえておくべきなのか、きっと認識を新たにするのでは?と思います。実際に寄生虫分類学生態学をやり始めた学生に、手頃な教科書としてお勧め。