14枚のスライドで25分喋る方法

なぜかホテルの無線ネットがつなげないので学会会場から更新(3/10)。
昨日のシンポは、コーディネイターMさんが同一系統の話題をうまく配列してくれたおかげで、外来種・物質循環・系統進化という3題噺になんとなくまとまった。ただし、モノを見る寄生虫屋と理論先行の生態屋の視点ギャップはやはり健在で、特に冒頭の外来種2題の切り口の違いが際立っていた。もっともこれはどこへ行っても同じで、昨年のメルボルンのICOPAでも全く同じ光景が見られたのだが。コーディネーターM君はいつのまにかかなり「寄生虫屋」寄りになってきた。
ただし、発表者に対してちょっとだけ苦言を言うと、たとえ生態学者でも寄生虫に手を出したなら、「自分はparasitologistではないので」という言い訳はしないでほしかった。現在、日本で寄生虫の分類や生活史の記載をしている人は片手の指ほどしかいないし、しかも年配の先生方が多く、中堅若手が払底している。生態学会などではどうも記載的研究は軽視される傾向があるのは否めないと思うが、自分たちでこういう仕事をしなければほかにやる人はいないのだ。日本には山口左仲を初めとする過去の分類研究者の膨大な遺産があるが、今後は日本の新種は皆海外の研究者が記載し、模式標本も海外に所蔵されるという事態になってしまうのではないかと本気で危ぶんでいる。生態学では種の同定は研究に必須のスキルであるから、生態学者であっても、自分の材料は自分で責任を持って同定できるようにになって欲しい。
夕方の自由集会は二枚貝保全のところ。発表者は皆淡水貝研の常連で、私にとってはなじみのある話が多かった。ただ、A倉先生のカワシンジュガイ研究史の話は非常に貴重な話題で、若い人にはぜひ聞いて欲しかった。同じ人が同じ調査地を50年近くの時間経過を経て調査するというのは本当にすさまじい説得力。