夢浮橋に乗って

勤労感謝の日はU川でカワヒバリ調査がお決まりのスケジュールである。今日はついでに、少し離れたところまでカワニナの採集にも行ったので、まずは駅前でレンタサイクルを借りた。今日は紅葉目当ての観光客が非常に多いので(ただ紅葉はまだわずかしか色づいていなかった)、レンタサイクルは出払っているかもと思っていたが,幸いまだ残っていた。

目的地に着いてから、借りた自転車が「夢浮橋号」ということに気がついた。

U川の河床掘削工事はまだ進行中である。もともとカワヒバリの採集をしていた塔の島下流側は、柵が撤去されてようやく近づけるようになってはいたが、しっかり掘削されて深くなってしまったので、もう当分採集はできない。2012年、2013年と2年連続で洪水被害が出たので、改修を急いでいるのだろう。しかし、著名な観光地の風光の中心をなす川であるにも関わらず、まるで溝のごとくに深々と掘削され,ますます人が近づきがたい川となってしまっているのは、惜しいとしか言いようがない。今日は観光屋形船もたくさん出ていたが,まるで堀の中を遊覧しているようだった。

下流の浅瀬が潰れてから新しく選んだ採集地点も、その手前数メートルまで工事現場が接近してきた。ここは2012年の集中豪雨で護岸が一部崩落したところ。

工事現場上流端の川辺から塔の島方向を望む。

今年は出水がなかったため、カワヒバリガイ密度はここ数年でもっとも高く、石の裏にべったり付着していた。昨年まではカワヒバリガイはそれほど多くなかった下流のI橋周辺でも、今年は転石の下に数十個体のクラスターが普通に固着している。おそらく感染率は低いだろうが,貝密度が高ければ寄生虫の実質量は多くなる。しかも今年はエルニーニョで暖冬になる可能性が高いから,腹口吸虫のリスクが高い年だ。ここ6年ばかりは病魚は発生していないが、今年は冬に一度様子を見に来ようかと思う。