岐阜県における水生生物を用いた学校教育のアンケート

ふと思いついて、以前入手を断念したVon Bearのセルカリア記載論文を持っているかどうか、ユーラシアの西の端に近いところにいる研究者に問い合わせてみたところ、早速pdfを送ってくれた。1827年に出版されたドイツ語の本の一部で、記載はなんと12ページにわたるしっかりしたもの。ただ、本の保存状態があまりよくなかったらしく、図版はにじみが多くて、小さな絵はほとんど消滅していた。何だか高松塚古墳の壁画でも見ているような気分になる。
明後日の陸水学会近畿支部会の発表準備をしていたら、このブログでそれを知ったkogataさんが、過去に岐阜県内の小〜高等学校の理科教諭を対象に行った、水生生物を用いた学校教育に関するアンケート結果が公表されていることを教えてくれた。集計済みのpdfファイルはここにある。
http://www.fish.rd.pref.gifu.lg.jp/kyoiku/anke-to/kyoiku-katsudo.pdf
このアンケートでは水生生物全体を対象としているので、水質指標生物だけではなく、魚の飼育やプランクトンの観察、カエルの解剖なども含んでいる。児童生徒がこれらを用いた教育から何を学んだか、学年別に集計されている。その中で小学校の教諭の意見を見ると、水生生物を用いた授業は、「理科学習」「環境学習」ではなく、地域の自然を見直す「地域学習」の一つとして評価が高いことがわかる。地域学習は、理科の目指す「普遍的真理」の学習ではなく、地域の個性を知る「個別」の学習で、どちらかといえば社会科だ。ということは、小学校の段階の野外生物観察は、単に種数の豊富さ(※無論.小学生が絵合わせでできる範囲で十分)を調べて「この川にはこんなにいろいろな生物がいる」とか「川とため池では住んでいる生物が違う」ということを発見させた方が、学習効果が高いのかもしれない。中身の分からない「水質」と無理に関連付けて変な「理科ごっこ」をやるよりはずっとよいはずだ。理科や環境学習として位置づけるのは、ある程度基礎を学んだ中学や高校での話だろう。やはり、それぞれの学年に応じて、ふさわしい内容の学習プログラムを用意する必要がある。