外来種被害防止行動計画(案)、授業でのパブコメ

本年度の環境省パブコメ授業。今年はちょうど手ごろなものが出ていたので、模擬ではなく本当のパブコメにするつもりでやってみた。まだ外来種に関する講義はこれからなので、学生諸君はあまり予備知識がない状態でトライしたわけだが、果たして的を得たコメントは出てきただろうか。
90分という授業時間、および私の講義でまだ外来種問題の話をしていないため、学生に予備知識が少ないという制約があり、行動計画(これ)の中から、第1部第2章第2節「各主体の役割と行動指針」から2.5〜2.9、第2部第1章第1節「外来種対策における普及啓発・教育の推進と人材の育成」、および第4節2「生物多様性保全上重要な地域における外来種対策」より陸水生態系に関する項目をテキストとして抜粋した。もちろん、授業後には、パブコメは個人でできるので、今日取り上げなかった箇所にも関心があれば自分でネットからするよう指導。

  • P68L19-23、教育機関に求められる役割 「小学校、中学校、高等学校等での教育の現場において(中略)外来種被害予防三原則、外来種が我が国の在来種や生物多様性・社会等に与える影響及び、外来種問題が起きている背景等について教育していくことが求められます。」

(学生コメント)日本から海外への外来種の問題は取り扱わないのか。
(m-urabeコメント)良い指摘点。外来種問題は相対的なもので、無計画な持ち込みだけではなく、持ち出しも生態系に被害を及ぼす場合があることは教育するべきだろう。

  • P68L31-36、研究者・研究機関・学術団体の現状 「ただし取組の温度差は大きく、一部の研究者は積極的に外来種研究を行い、対策を進めているものの、我が国の研究機関、学術団体の全体としては、外来種対策が必ずしも普遍的な取組課題とはなっていないのが現状です。さらに、外来種を対象としていても基礎的な生物学的知見の解明にとどまっており、防除等の対策には結び付かない研究の例も見られます。」

(学生コメント)研究機関が外来種問題しか取り扱わないことはおかしい。また、外来種が必ずしも悪いものではないことも言わなくてはならない。基礎研究をしっかりしないと対策も立てられないではないか。
(m-urabeコメント)全面的に同意。

  • P69L24、国民に求められる役割 「外来種被害予防三原則である「入れない」、「捨てない」、「拡げない」を遵守することが求められます。特に動植物を飼養等する場合は、野外に捨てることなく、最期まで飼養等をすることが必要です。自己所有地内で侵略的外来種を発見した場合は、周辺の生態系に被害を及ぼすおそれがあるため、安全性を確認した上で、必要に応じて確認情報の地方自治体への提供、さらには駆除等の実施、参加協力に努めることが求められます。また、民間団体等と連携して防除等の侵略的外来種の被害防止対策に参加することのほか、周辺の自然環境における外来種の分布を把握し、情報提供すること等の担い手としての役割も求められます。」

(学生コメント)みんなが「求められていること」を知らないのが問題。一般の人には「ペットを捨てない」だけでいいと思う。内容が難しすぎる。
(m-urabe)まあ確かに。住民との連携は必要だけれど、いきなり「求められます」とくると「そんなの知るか」と反発する人も出そうです。最低限遵守するべきことと、ボランティア的に「できること」は区別して書いた方がよいでしょう。

  • P71L24  国による具体的な行動の普及啓発 「現行の学習指導要領は中学校においては 2012 年度(平成 24 年度)、高等学校においては2013 年度(平成 25 年度)入学生から順次実施されていることから、教育者や指導者向けに、外来種問題に関する教材や教育プログラムの開発を行い、学校教育や社会教育の現場に広く提供します。」

(学生コメント)教科書改訂というが、外来種問題は日々変化しているので、改定までに時間がかかっていてはいけないのではないか。教科書や教師にまかせるのではなく、専門家やNPO団体に頼めば良いのではないか。
(m-urabeコメント)これは外来種問題に限らず、環境教育全体が直面している問題。教科書は執筆から検定を経て出版まで4,5年かかるため、どうしても情報が遅れることになる。教科書出版社を経由するだけでなく、研究機関から直接教育現場に情報提供できるようなルートが求められる。学校の先生の負担にも配慮しなければならない。

  • P73L22、同上 「環境調査研修所において、外来種に関する研修を開催し外来種問題を担う人材を育成します。」(環境省)

(学生コメント)どのくらいのレベルの内容か。どのくらいの時間をかけるのか。育成される人はどのように選ばれ、その後どうするうのか。
(m-urabeコメント)環境省さん、よければその辺のことも具体的に書いてください。

(学生コメント)環境省のマニュアルがどこにあるかわからなかった(※実体験らしいです)。もっと目に留まるようにしてほしい。
(m-urabeコメント)まず、上記のURLは環境省ホームページではなく、外来生物法のサイトなので、そこで面食らいます。また、外来生物法サイトのトップページには「防除マニュアル」の文字がありません。よく見ると「防除に関する手引き」というコーナーがあって、それだとわかりますが、こんな用語の不統一が一般の人の混乱とサイトの使いづらさを招きます。「行動計画」にはさかんにネットによる情報の収集や発信が謳われているのですけれど、まずはHPを使いやすくすることを真剣に考えられた方がよいかもしれません。

これらの意見は、私の意見と合わせ、パブコメとして環境省に送付したいと思います。もちろん、学生諸君も自分たちでやってみてください。