オツトメの後マッサージ店に行き,その後自宅へ戻ったところで強烈に眠くなってバッタリ。目が覚めた時にはもう薄暗くなっていた。大学へメールチェックしに行く前に,K呂町を回って,共同研究者に送るコモチカワツボを採集することにしたが,その頃にはもう周囲は真っ暗。街灯の薄明かりの下,住宅前の水路に屈みこんでガサガサやっている人影は相当不審に見えたに違いない。幸い,集落の住人に見つかることもなく,警察に通報されることもなく,採集を終了した。
生物の研究者が挙動不審であることはよくあるが,そういえば私が院生の時にこんなことがあった。ある日,夕方暗くなってから大学に行った。大学のキャンパス内は広さの割に街灯が少なく,かなり暗いのだが,その街灯の1つの下に,蓬髪の小柄な老人がしゃがみ込んでいるのに気がついた。うつむいたまま,じっと動かないので顔は見えない。大学に迷い込んだ徘徊老人に違いないと思い,私はその場を遠巻きにしながらそっと様子を窺った。そして,その時やっと,老人が両手にシャーレとピンセットを持っていることに気がついた。
私に気がついて「…ん〜?…」と顔を上げたのは,研究室の助手のT先生。街灯に集まってくる羽アリの採集をしていたという訳である。それにしても学内だからよかったようなものの,あの様子は学外だったら確実に110番されていただろう。