S先生を悼む

長らくコモチカワツボの共同研究をさせていただいたK高校のS元教諭の訃報が届いた。この春に定年を迎えられ、やっとこれから悠々自適という時なのに、残念と言う以外に言葉が見つからない。S先生は長らく生物部の顧問として、同部の活動を全国レベルにまで引き上げた。3年前には日本ストックホルム青少年水大賞のグランプリに輝き、日本代表としてストックホルムでの本発表を行った。貝類学会を始めとする関連学会にも、部活の生徒さんたちと一緒に積極的に参加され、その中には卒業後に大学で生物学を専攻するに至った生徒もいる。コモチカワツボを始めとして、大学との共同研究もいくつかあり、生物部員の何人かは高校生にして既に業績持ちとなっている。当研究室との共同論文は次の3本である(出版が間に合ってよかった…)。
Hamada, K., Takeda, N., Tatara, Y., Ogata, D., Ida, A., Sonohara, T. and Urabe, M. (2013) Habitat range of Potamopyrgus antipodarum (Caenogastropoda: Hydrobiidae) introduced into Japan. Venus 71: 61-80.
Hamada, K., Tatara, Y., Urabe, M. and the Biology Club of Kojo High School. (2013) Survey of mitochondrial DNA haplotypes of Potamopyrgus antipodarum (Caenogastropoda: Hydrobiidae) introduced into Japan. Limnology 14: 223-228.
Tatara, Y., Hamada, K., Urabe, M., and the Biology Club of Kojo High School. (2014) Across-population variation in sex ratio in invasive Japanese Potamopyrgus antipodarum (Caenogastropoda: Rissooidea: Hydrobiidae). Limnology 15: 185-190.
特に、最後の短報ではK高校はフローサイトメトリーによるDNA定量を担当し、日本に侵入したコモチカワツボが3倍体であることを確定し、さらに、特殊な環境には少々奇妙な倍数体(3.5倍体?)の個体群が存在したことを示唆する重要なデータを得た。今、アイオワ大学が精力的にコモチカワツボの倍数性を調べているが、K高校の得た結果は、彼らの研究にもヒントを与える可能性が高いと思っている。
S先生、長らくのご活躍、本当にお疲れさまでした。また、生物部の在校生や卒業生の皆さん、これからもS先生のご指導を忘れず、それぞれの進路で活躍されるよう心から願います。