2年前(2010年7月22日)に放送された「NHKニュースおはよう日本」。地域の生態系を保全せよ,という趣旨は結構なのだが…
淡水ベントスの研究者ならだれでもこの画像に突っ込むはずだ。
これはカワニナではなく、琵琶湖の固有種Biwamelania亜属のほう。画像を見ると1種類ではなく、カゴメやタテヒダなど複数種が混在しているようだ。ヒメタニシも写っているので,もしこれの採集場所が琵琶湖であれば(国内外来種として既に侵入している湖沼がいくつかあるので、琵琶湖産と断定はできない)、多分浅い(と言っても水深2m以上)砂泥底の貝曳きで得られたもの。たとえ琵琶湖近辺であっても、これらを河川や水路に放流するのは完全にナンセンスだ。生息環境が違うので定着はできない。
映像を見ると、滋賀県内での取材が行われた形跡はない。これらの固有カワニナの自然分布域は滋賀県だけなので、”カワニナ"の映像ワンカットを撮影するためにスタッフがわざわざ滋賀まで撮影に来たのか疑問が残る。となると、皮肉なことに、NHKは「地域のものではない生物」を放流する問題の現場を紹介してしまったことになる。勿論NHKが悪いのではなく、取材を受けた関係者のだれかが「これがカワニナです」と撮影スタッフに見せたのが原因だろうから、図らずも、カワニナの「地域性」に関してはまだまだ世間の認識が足りない、という現実が露呈した報道。