今日はS田研でウナギを料理するというので,内臓をもらってきて虫取りをすることにした。ウナギは日中の魚調査であまりとれないので,私にとっては今までの検査数が比較的少ない魚種である。
で,計測値のデータと共にいただいた内臓は五匹分。ウナギという魚,何が大変といって解剖の作業である。首を切ったってにょろにょろ動き続けるのだから。だから,内臓だけ貰えるというのは,作業の半分以上を端折ったようなものでお気楽この上ない。聞くと,S田研では,ウナギを酒につけて酔っぱらわせ,ぐったりしたところで捌いたらしい。おかげで,今日は内臓を開いていると,いつもの生臭い魚の匂いの代りに,芳純な酒の香がしてくるのだった。今度,ナマズの解剖もこの手でやってみようか,と思う。
まず一匹目の胃袋を切り開く。胃の内壁には赤っぽい粘液が付着しているなあと思ってふと気が付くと,その粘液の塊全体が生きているかのようにぞわぞわと動いているではないか!寄生虫大好きな私でも,一瞬ぞぞっとした。よく見ると,粘液の塊と見えたものは,鉤頭虫と見まごうほどの大型の吸虫で,それが胃壁にびっしりとはりついてぞわぞわ動いているのである。

種類はすぐに判明して,Azygiaという属の虫だ。琵琶湖では既に報告があるが,私は現物は初めて見た。数えてみたら,大小合わせて70個体近くが寄生していて,これを標本にするのに2時間近くかかってしまった。大仕事である。
他の4匹のウナギもこんな調子ならとても調べきれないなあと観念したが,幸い(?)このお祭り状態は最初の一尾だけであった。そういうわけで,やっと今から帰宅できる。