かつ消えかつ結び

今年は自学科だけでなく、隣の環境政策・計画学科で大学横のI上川の湧水地形について調べた院生Iさんの審査も担当させていただいた。I上川は天井川で河床が周辺の土地より高いと言われているが、川の中に湧水がかなりある。いったいその水はどこから?と不思議に思っていたのだが、Iさんの結果を見てようやく合点がいった。確かにI上川の河川敷は堆積物が多く堤内(堤防を挟んで川と反対側)より高いのだが、川の澪筋の部分は掘られて若干深くなっており、かろうじて周囲の土地より深くなっているのである。水はそこから湧いているので、やはり川の周辺から浸透した水が河道内に来ているのだとわかった。それにしても湧水の場所と周辺の土地の高低差は非常にわずかで、一度大水が出て堆積物が溜まれば、湧水の出口は簡単に移動してしまうだろうということが容易に想像できる。湧水はその時々に形成された窪地に湧き出し、それは河道内だけなく河道外(堤内)である場合もあるだろう。なんと泡沫のようなハビタットだろうか。扇状地河川における生物ハビタットの動的なイメージと、それを保全することの難しさ(個々のハビタットではなく、動的なシステム全体を維持しなければならない)がようやく腑に落ちたような気がした。