明日から寄生虫学会大会がハイブリッド形式で始まるので、今日はオンラインでサテライトミーティング。前半(分類形態談話会)は、寄生虫学会としては異色の「寄生する貝」の研究をしているTさんの発表で、ハナゴウナ類の平行進化の話。貝殻の形態はほぼ生息環境(つまりは寄生形態)で決まり、同じような形態変化がいろいろな系統で何度も生じているという、とても綺麗な結果。他動物の体内など捕食される恐れのない環境では、貝殻は薄く丸くなり、最小限の材料で最大量の軟体部を収容できるようになる傾向があるらしい。ということは、貝殻形態の適応的意義を考えるときは丸い形を原型として、平べったいのや細長いのは「何か選択圧がある」と考えるのが適切なのかも。生態学疫学談話会の1題目は大学院生のCさんで、寄生者と捕食者の中間的な存在であるミクロプレデターの話。要するに、宿主の体の一部を消費するが、真の寄生者のように特定の宿主個体と緊密な関係をもたない動物のことで、代表はカやダニなどの吸血性動物だ。似たような生活様式を持っていてもジェネラリストからスペシャリストまでおり、宿主にくっつく時間も秒単位のものから一生のものまで多岐にわたる。このような生活様式のグラデーションが寄生者の個体群構造にどういう影響を与えるか調べているそうだが、なかなか理屈に会わなくて困っているようだ。2題目は九州のI先生で、ウマやシカの肉にひそみ、食中毒の原因となることもある住肉胞子虫の話。シカが中間宿主でカラスが終宿主という寄生虫がいることにびっくり。こんなふうに「屍肉が食われること」を前提として生活環を回す寄生虫がいるのだなあ。