基礎を大切に

1回生の生物学の講義,最終回の課題は「15回の講義で一番印象に残ったこと」を挙げてもらった。まだ締切前なので一部の学生の意見しか見ていないが、予想以上に印象に残った場所がバラバラなのに驚いた。授業で特に強調した場所、例えばメンデルの法則の用語の転換だとか生命の起源についての最近の学説、あるいはウィルスについての基礎知識などは予想通りという感じだが、もっと基礎的な部分、つまり高校教科書に載っているレベルのことでも「印象に残った」という学生がかなり多いのである。「DNAが遺伝情報ということは知っていたけれど、実際に塩基配列からアミノ酸配列に置き換えるのは初めてだったので面白かった」とか「アロステリック酵素をアニメで見たこと」とか「呼吸でエネルギーを得る過程がすごく複雑だということ」という感想が出てきた。おそらく半分以上の学生が高校で「生物基礎」までしかやっていないので、高校レベルの話でも目新しく、面白いと感じたのだろう。高校で受験のために「生物」を勉強した学生にとっては「暗記ばかりさせられた」という記憶しかないかもしれないが、こういう本当に重要な基礎事項を面白く講義すること、またそのことを発見した過去の研究者のすごさをきちんと伝えることをもう一度しっかり考え直さなければ、と思う。