牛刀

学会3日め、昨日に引き続き河川地形のセッション。昨年、カヌーコース調査の時に、古巣から3次元流速計を拝借したが(高くてウチでは買えない)、今日の研究発表で、同じような流速計や流向計のベクトルデータを駆使した解析がいくつかあったので参考にする。ところが、偶然かもしれないが、今日の発表でその手の解析が行われたのは幅2mの3面コンクリ魚道や飛び越えられるほどの細流など、小規模な流路ばかりで、去年、複雑な立体の流れを持つカヌーコースに挑んだ私達としては、あのお高い流速計はこんな小さな流路の計測に使うものなのね、といささかガックリする。工学系の発表で、水路の構造から一所懸命に水理学の計算をして、なるべく実測値がうまく説明できるようにいろいろ努力している研究があったが、要は魚道なんだから魚を一匹放して登れるかどうか試してみればいいのに、と思いながら話を聞いていたら、やはり聴衆の中にも同じ感想を持った人がいたようで、「いろいろ計算しているけれど、魚の眼から見たらどうなの?」という質問が出ていた。よい魚道を作るには水理計算よりも魚の行動の丹念な観察が重要だと思うし、あんな小規模の魚道なら、高い計測機器でこまかく流向測定するより、試作品をいくつも作って実際に魚を泳がせて試したほうがよっぽどお安く「正解」にたどり着けるような気がするが、工学系の勉強をした人にはなかなかそういう発想は出てこないのだろうか。
午前中で一般講演は終わりなので、午後は岐阜市で行われる木曽三川フォーラムを覗きにいった。カワニナの研究で常連のG高校生物部が発表するということで行ったのだけれど、今日は高校が試験中だったそうで、来場していたのは発表者1人と顧問の先生だけだった。岐阜県内での県外産カワニナ放流中止に本当に一所懸命取り組んでいて、それに協力してくれている市町もあるが、非協力的なところもあるという。話を聞くと、そこでは「高校生からの意見」というだけで門前払いにされたようなので、どうも行政が生物多様性について不勉強というだけではなく、その市は地元の高校生を大切にしていないのではないかという気さえする。そんな噂が広がると、その市で子育てをしようとする親が減りますよ。