寄生虫学会で東京。今年度から生態疫学談話会の世話役を引き継いだが、K野さんのサポートによってなんとか職務完了。やれやれ。ところで、K野さんが完全引退してしまったらこの談話会をどのような方向に持っていくか、相談する人がほしいところだけれど、だれか協力してくれそうな若手がいないかと切に思う。この期に及んで、寄生虫学出身の人と生態学出身の人の乖離は、残念ながらますます進んでいるような気がする。寄生虫学会中心の人が生態学会へ出るのは難しいので(医学部では講座単位で所属学会が決められているところが多く、興味のある学会に自由に出られないという現状があるため)、生態学会中心の方、せめて寄生虫学会の自由集会になるべく顔を出して勉強しに来てください。
もう一つの自然史系自由集会である形態分類談話会では、目黒寄生虫館のIさんによる山口左仲の経歴と原図・原本の紹介。パソコンはおろかコピーすらない時代に、画家を雇って書かせた寄生虫の原図やトレースの数々や、何重にもデータが加筆された分類学情報の「虎の巻」など、凄まじい情報量を満載した山口の資料を会場にお持ちいただいて、時ならぬ出張博物館となった。普段、ガラスケースの中に展示されている資料を手に取って眺める貴重な機会とあって、皆さん興味の尽きない様子。特に原記載図の点描はこちらの想像を絶する細かさと正確さで(それをきちんと見るには図を拡大しなければならないほど)、プロの仕事を改めて見せつけられた。それを思うと、山口の晩年に論文の挿図を任せられた寄生虫館2代目館長のK先生の描画力は本職の画家に匹敵するレベルだったという訳で、これもまた凄い能力の持ち主だったのである。