砂漠のオアシス

今日は、ミヤイリガイ発見100周年記念シンポまで時間があるので、生物画家N山さんの主催するアトリエ・モレリを訪問した。まずは寄生虫絵はがきをプレゼントしてN山さんの創作意欲を刺激(笑)。それから学習本の制作に関わるいろいろな苦労話や絵画教室に来られた生徒さんたちの話を聞いたり、こんど出される本に載せるコモチカワツボの囲み記事についての打ち合わせをする。
その後、N山さん方が保全活動に取り組んでおられる文京区内のフィールドを案内していただいた。文京区でも後楽園から東の台東区寄りの方は私もなじみの場所だが、豊島区寄りのこの辺を歩くのはまったく初めて。
都心というとほとんど自然は残っていないような先入観があるが、このあたりは大名屋敷があったところで、戦災にも遭っていないため(屋敷は爆撃せずに残し、終戦後にGHQが接収して居住した由)、庭園や寺社にシイやイチョウの見事な大木が残り、下草にも自然植生がちゃんと残っているということである。この季節、キランソウタチツボスミレがちゃんと花を付けていた。



関口芭蕉庵。芭蕉翁が神田上水の工事に関わっていた時(まだ駆け出し俳人だった若年のはず)に住んでいた所だとか。芭蕉庵の前には樹齢200年は下らないであろう見事な乳イチョウ

新江戸川公園(元細川屋敷)。沢にはカワニナの姿もあった。

それから、町中の何の変哲もない小溝にサワガニが生息していたり、マンションの植え込みにコクワガタがいるという話を聞いた時には驚いた。わずかな生息空間と食物に、しがみつくようにして生きている訳である。庭園の小さな沢では昨年クロスジヘビトンボが採集されたという。あの、あまり飛ぶのが上手くない成虫が都市部を何キロも飛び越えるとは考えられないので、やはりそこでも昔から細々と命脈を保ってきたのだろう。まったく表彰したくなるようなしぶとさである。このような都心の貴重な自然(「純」自然ではないが、それに近い形で維持されてきたもの)の価値を発信し続けているN山さんのような方の活動が途絶えることのないよう祈りたい。