生態学会和文誌の特集を読んだ。私は環境「生態」学科所属なので、著者の方々から見ればホームもホーム、どホームに見えるだろう。学科の専門科目に関して言えばその通りなのだが、学部共通の必須科目となると、とたんにいやというほどアウェイ気分に浸ることになる。ウチの学部の4つの学科のうち、生物資源管理学科は農学系なので生物の履修率は環境生態以上に高いが、環境建築デザイン学科は工学系または芸術系であり、環境政策計画学科は社会科学系だ。もちろん、実社会ではこれらの分野は無関係であるはずがないのだが(実際、教員同士では自然科学系と社会科学系でも非常に話が通じることも多い)、高校を出たばかりの大学1年生にそのところを理解させるのは正直言って難しいだろう。ところで、ウチのカリキュラムでは1,2年次に、これらの学生に必修の講義を3つと、フィールドワークを課している。「環境」というキーワードでつながってはいるが、興味も素養もバラバラな学生たちを一時に相手にする訳である。これは、座学でもフィールドワークでも結構テクニックを必要とし、今までにもその成果をここにちょこちょこ書いてきた。
ところで同特集で、高原さん・sawagani500さんのお二方が「アウェイの授業にはアウェイならではの面白さがある」ということを書いておられるが、実は私もアウェイを面白がっている人間のひとりで、それでフィールドワークをより専門性の高い2年生の担当から1年生の担当へと下ろしてもらった。なかなかこちらの方を向いてくれない学生に授業をやるのは、一言で言えば、kensuke_nakataさんの言うように、それが「生態学と社会のインターフェース」だから、ということだろう。建築デザインも行政も、無論環境とのつながりは非常に大きいのだが、現状ではギャップも大きい。たとえばこの日の授業で話したのは、私が現実に出会ったある河川改修の現実についてのことである。昔ある川を改修した際、河床にあった大きな岩(かつでは地元の子供たちが登って遊んでいた)を発破で取りのけてしまったという話を聞いた。私はその話をしてくれた河川管理者に「重機での作業の邪魔になったんですね」と相づちを打ったが、その返答は完全に私の意表を突いたものであった。「いや別にそういう訳じゃないんです。設計図にないからですよ。」私は、すくなくともウチの学部で学ぶ学生にはこの分野間ギャップを私より早い年代で感じ取り、それを克服する努力を学部生の間に経験して欲しいと思っている。それが、生態学の成果を行政や国土管理の面にスムーズに移してくための大きな力になると思っているからだ。だから私は、他学科の学生と話の出来る1年生の必修科目がけっこう好きだし、「全学科の学生が一緒に受講する」という形式を変えて欲しくないと思っている。もっとも、こういう授業の価値が分かるのはおそらく実社会に出た後だろうから、早く専門分野を勉強したくてたまらない1年生の方から見ると、無理やりに受けさせられる非専門の授業は概して面白くないことになる。このへんがアウェイの損なところではあるが、授業アンケートの点が低いからと言ってその授業がカリキュラムに不要だということには決してなるまい。