帰れるのか?

昨日の晩は広島大のN澤夫妻と一緒に、主としてカナダの研究者グループと夕食に行った。環境寄生虫学(という分野があればの話だが)の大御所D.Marcoglieseと同席できたのでラッキー。川の生産性と寄生虫相について、有り合わせのデータを見せてコメントを求めたら、彼の学生のデータでは栄養塩との関連は出なかったという話であった。やはり(特に川では)栄養塩濃度という大雑把な環境パラメータではダメで、そこに宿主となる生物がどれだけ生息しているのかをちゃんと測定しなければならないようだ。それから、生息域の分断化の影響も大きいとのこと。これは魚を終宿主として水界だけで生活環を回す寄生虫の生息に関しては重要であろう。ふむふむ。
今日の午前はM君の師匠であるカリフォルニア大のA.Kurisを始めとする潮間帯寄生虫の研究のセッションに出る。Kurisの発表は、生物体が小さいがゆえに生態系のエネルギー循環においては重要ではないと考えられている寄生虫の先入観を払拭すべく、彼らのフィールドである干潟の物質循環において寄生虫がどれだけの割合を占めるかを定量するという、人員を(もちろん資金も)動員したとんでもない力仕事である。作業をするときは、30人の人間を動員して、1日12時間、週6日の労働だとか。その結果は、干潟に冬やってくる渡り鳥と同じくらいのバイオマスがあるという結果になったそうである。あとでM君の曰く「寄生虫の研究というのはお金がなくてもできると思っていましたが、あればああいう研究もできるんですねえ」。同感。
昼にK野さんとO川先生に会い、はじめてテロが発覚して空港が厳戒態勢になっている話を聞く。K野さんとO川先生の曰く「まあ、ユーロスターでパリまで行ってそこから帰るという手もあるし」「僕はドバイ廻りだから絶対大丈夫」「ま、なるようにしかならないわな」…ちゃんと帰国できるのかしらん?
夕方から自分のポスターセッション。M君がカリフォルニア大のグループで外来種寄生虫問題をやっているM. Torchinを紹介してくれたので説明。他にも外来種関係の発表はいくつかあったが、外来種からは寄生虫がいなくなるという発表がほとんどであったので、寄生虫も一緒に持ち込まれたカワヒバリガイのケースにはちょっと興味をもってもらえたようだ。
ホテルに戻ってテレビをつけるとニュースはテロ未遂の話題ばかり。空港からの中継で、アナウンサーがえらく確信に満ちた表情で「明日には正常に戻る見込みです」とか言っている。実家の姉に空港の状態についてメールを入れたところ、折り返し「テロリストに間違われないように気をつけて帰っていらっしゃい」という返事が来た。関東女にしておくにはもったいないナイスボケである。