大淀貝類集荷センターへ行ってみた。最寄り駅からタクシーに乗ったら,車のエンジンがかからず,運転手さんが青くなり,ボンネットを開けてなにやら修理を始めるという一幕はあったが,無事到着。
さて,私は産地のはっきりしたシジミを買うだけと簡単に考えていたのだが,集荷センターに着くと応接室に通され,漁協長さんが自ら応対して,資料まで用意して,シジミの流通について丁寧に説明してくださった。何だか恐縮する。
お話を伺ううち,私のほしい淡水産マシジミを入手するには,今は時期が悪いということがわかった。というのは,春から秋までは消費の中心であるヤマトシジミの漁期であり,国内産は100%近くヤマトになってしまうそうだ。マシジミが入るのは,ヤマトが取りづらくなる冬1〜3月で,輸入物もこの時期が多い,との話であった。
シジミの輸入に関する輸入統計も見せていただいた。北朝鮮・ロシア産の輸入量はここ10年間ほぼコンスタントだが,中国・韓国産のシジミ輸入量は2003年あたりからかなり減少してきていて,その分「その他」の国が増えている。中国や韓国でも資源が枯渇してきたのだろうかと,心配になる。
そのあと,加工場の方でシジミを見せてもらった。これが中国から輸入したばかりのシジミで,このあと砂抜きなどをしてから出荷される。

なるほど,セタシジミによく似た3角形の殻をしている。色からしてカネツケシジミではないようだ。
これを2kg買うことにして,値段を聞いたら「400円です」と言われた。
…漁協長さんからたくさん説明をしていただいて,資料まで用意していただいて,加工場をうろうろさせてもらって,結局買ったのは400円だけ…
自己嫌悪になりそうになった。こんなことなら,手土産ぐらい持ってくるのだった。今度は冬に来て,もっといろいろな地域のシジミをたくさん買おうと誓う。
帰学後,早速シジミを広げて見てみる。うん?貝に変なものが付いている。これは…

こんなにあっさりカワヒバリガイ(もちろん生きていた)が出るとは思わなかった。砂抜きとパック詰めの段階でだいぶ除去されるのかもしれないが,こんな調子で輸入されているのなら,今まで日本で5つの地域でしか発見されていないのは僥倖といってもよいのかもしれない。
それにしても,私は今日,特定外来生物であるカワヒバリガイの混じったシジミを大淀から県立大まで運んできたことになる。私はカワヒバリガイ寄生虫を研究するため飼養等許可証を申請しているから,外来生物法には抵触しないのだが,もし許可を取っていなければ,もうこれだけで「違法」であり,どこぞに「出頭」しなければならない。このように混入が主要な移入ルートである外来生物のコントロールに対し,外来生物法だけでは如何ともしがたいことを改めて実感する。