昼に,中庭に茶色い鳥が落ちているのを見つけ,ハトかと思ったら星ゴイだった。目の鮮度はあまりよくないものの,冬のことなのでほとんど腐敗していない。これはいい獲物とぶら下げて持ち帰る。
標本作りの達人U村さんに連絡をとったところ,早速鳥屋のY内君と一緒にやって来たので,計測をする。外傷はなく,胸骨が飛び出してがりがりに痩せていたので餓死らしい。餌不足の上に寒さ続きで衰弱したのだろう。
開腹して腸を取り出し,残りはU村さんが持って帰った。さっそく寄生虫を探す。十二指腸の辺り,一番寄生虫の多いところから見始めたが,小さな条虫がいくらかいるだけで,あまり虫の姿がない。おかしいな,と思って実体顕微鏡の倍率を上げ,絶句した。
シャーレの中に散らばっているおびただしい小さな破片,てっきり消化物だと思っていたのが,ことごとく小さな条虫の頭節,片節,小型の吸虫だった。
とても拾いきれるものではない。条虫は,頭節だけでも100近くありそうだ。条虫はボリュームがあるので目立つが,1個体の宿主に寄生する数は意外と少ないのが普通だ。ところが,このゴイサギの腸には頭節がまるでアール・デコ調の柄のごとくに散らばっている。これだけのシストセルコイドを食ったということは,この辺の魚の条虫保有率はかなり高いということだ。岐阜や福岡の魚では考えられないが,やはり琵琶湖の豊富なプランクトンが条虫の第一中間宿主として大きく貢献しているのだろうか。
結局,プレパラートを十数枚作って,あとは捨てるのももったいないのでそのままホルマリンに漬けた。腸の真ん中あたりからはマッチ棒大の大きな線虫が数匹(ちょんぎれているので正確な個体数は不明),鉤頭虫も7個体出た。これらはすべて作法通りに固定する。
さてさて,また標本が大量にできてしまった。この前のカルガモの条虫といい,いずれはレポート程度作らなければならないだろう。整理して琵琶湖博にでも寄贈するか。