微視から巨視まで

 なぜ田んぼには多様な生き物がすむのか(2020.10新刊 京大学術出版会)

なぜ田んぼには多様な生き物がすむのか

なぜ田んぼには多様な生き物がすむのか

  • 発売日: 2020/10/30
  • メディア: 単行本
 

毎年12月に研究発表会を行っている水田生物研究会の常連メンバーを中心に、メジャーからマイナーまで水田生物について語った渾身の一冊です。思えば,今までは湿地や流域の保全の本に水田が登場することはあっても、水田生態系のみについて語った本というのはなかったのではないでしょうか(少なくとも私の記憶にはありません)。水田生態系の最新の入門書としてお勧めです。各章の著者が小は土の深さによる細菌や藻類群集の違い、数センチしか離れていない水底と水面の微小動物相から、大は日本列島の地史との関連性に至るまで,ありとあらゆるスケールで水田生態系を分析してみせるのは壮観と言ってもよいほどで、水田生態系のもつ重層的な意味合い(湿原として、一時的水域として、還元的土壌の存在場所として、撹乱地として…等々)がこれでもかと伝わってきます。