予習

まだ1ヶ月ほど先の話になるが、研究倫理セミナーの導入で使う予定のスライド。

トップダウン型研究不正の場合、たいていは実動部隊(ポスドク、院生)へのアカハラを伴うのでそれに対する防御が必要となるが、対処方法はポスドクと院生でかなり異なる。ポスドクは被雇用者なので、労働者としての身分を守る一群の法律があり、雇用者側は勤務が続けられるよう、職場環境や勤務条件を整える義務がある。従って裁判などでもそこを争点にすることができる。しかし、学生の場合は入試合格と授業料の納入とで教育サービスを受ける権利を有しているものの、その身分を守る法律というものは特にないので,普通の「基本的人権」を楯にして戦うしかないことになる(一方で,教員側は労働者として身分を守られている)。これが、根本的な学生の立場の弱さであり、教員と学生との間に横たわる身分保障の非対称である。これだと、学生が教員あるいは大学を訴える場合、身体や財産、名誉の侵害などの刑法に抵触するような行為があればもちろん可能だが、指導放棄、長時間の研究強要などの「不適切な教育サービス」という問題に対しては、裁判などはなかなか起こせないかもしれない。私は法律の専門家ではないので正確な情報は今のところ持っていないのだが、授業時間数の不足などの明瞭な証拠がない限り、教育サービスが不十分あるいは不適切だということを客観的に証明することはかなり難しいように思う。一番現実的な解決方法は「逃げる」こと、つまり指導教員を変える、大学を変える、進路を変える、ということかもしれない。受けたい教育を選ぶ権利は誰にでもあるはずで、それさえないのは社会がおかしい。