妄想

雨の徒然に,長い間積ん読していた「人と魚の自然史」を読む。意外なことに寄生虫の話が丸々一章出てきた。ラオスの農村で人や家畜の排泄物を利用しての養魚の循環システムをつくったところ,食料生産が順調になったことと引き換えに肝吸虫が蔓延しているという。安定的な生態系ができるとそこで寄生虫の生活環が回るのは当然のことだが,安定した生態系というのは,ある特性の生物の個体群だけに着目すると,マイナス面もあると言えるわけだ。ラオス肝吸虫の場合,被害を受けるのは終宿主であるヒトだが,一般的には寄生虫の害は中間宿主となる生物の方で顕著である。そこからつらつら考えてみると,捕食者は被食者にとって捕食者であると同時に,多くの場合,被食者に寄生する寄生虫の終宿主でもある。従って,被食者は捕食者の生活圏内に近づくことで、捕食リスクのみならず,病害性のある寄生虫に感染するリスクも負うことになる。そうしてみると,寄生虫の存在を考慮した場合,捕食者ー被食者関係は、その表面的な関係から予測されるよりも,被食者個体群にとってははるかにダメージが大きいのではないか。その辺をなんとかして相対的に評価すると面白い研究になるかもしれない(既にそんな研究があればご教示求む)。

人と魚の自然誌―母なるメコン河に生きる

人と魚の自然誌―母なるメコン河に生きる