- 作者: 石橋信義,名和行文
- 出版社/メーカー: 東海大学出版会
- 発売日: 2008/07/01
- メディア: 単行本
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ただ,全体としては,本書はまだ垣根が取れていない.やはりそれぞれの研究者が,生理学,疫学,生態学等々の,自分の興味のあるところをそれぞれ書いているような感じであるし,同じ寄生虫学でも”異分野”の理解になるととたんに手薄になるところも散見される,たとえば,医学寄生虫を専門にしている人にとっては,寄生虫の生活史の研究は過去のものであり,「現在ではほとんど生活環が判明している」と言ってしまいがちだが,野生生物の寄生虫の研究者にとっては「とんでもない!」ということになる.各章はそれぞれに興味深いが,全体を通して読むと,章と章の間の大きな不連続感がどうにもキツイのである.寄生(と共生)は現象面でも分類群でも広範にわたるので,編集者は「宿主と寄生者の相互関係について」とか「病害性の原因について」のように.各著者に共通のテーマを提示した方がよかったんじゃないかなあ,とも思う.ともあれ寄生虫に関しては,異分野の人々が共通の言葉で語るのにはまだ時間がかかるようである.