福岡の学生が卒論のテーマにしているアユ虫の研究結果が芳しくない。どうも、当初の見込みが外れていたと考えざるをえない。頭を抱える。
一つ考えられるのは、アユ虫の現在の分類学的位置が正しくない可能性である。アユ虫の属する科と、成虫で見るとそっくりな別の科がある。昔は同一の科にされていたが、幼虫期の形態と宿主が全く違うため、別科に分けられたのだ。アユ虫の属するOpecoelus科は巻き貝を宿主とし、眼点がなく、しっぽの短いセルカリアができる。それとそっくりなAllocreadium科は二枚貝を宿主とし、眼点があって尾の長いセルカリアができる。困ったことに、まだ分子系統のデータは不十分だ。吸虫の分類に関する最新の本をひもといて見ると、この二科を見分ける最も確実な方法は「Allocreadiumの成虫には、セルカリアの眼点の痕跡が残っている(ことがある)」!だそうな。親虫の器官では全く見分けができないということか。
寄生虫の成虫というのは体のほとんどが生殖器官であり、分類のポイントももちろんそれだ。生殖器官の形態というのはそうそう自然選択にかかるとは思えない。精巣が1個か2個か10個か、卵巣が丸いかくびれているかが生存に何の関係があるのだろう。幼虫期にあれだけ形も生態も異なる吸虫が、成虫になるとそっくり同じというのは、いったいどう考えたらいいのか、頭が痛い。

矢原さんのブログで、女性研究者の出産・育児に対する支援のモデルとなる取り組みに対する補助の情報を得る。もちろん結構なことで、これで助かる人が何人も出てくるであろうことは否定しない。だが、「出産・育児に対する支援」でことは足りるのであろうか。
研究者の身分が公務員であった旧国立大・公立大では、少なくとも女性の勤務条件は、一般の会社よりもずっとよかったはずである(法人化以降は、各大学によって事情が変っているかもしれない)。3年の育児休暇がとれる民間会社はそう多くないだろう。それにも関わらず、女性が働きにくいと感じるとしたら、理由は何なのか。法やシステムが作られても、表には出てこない大学の「内規」や「慣習」の前にそれはうまく作動するのだろうか。うまく論点を整理できないが、何か非常に不足な一面がある方策のような気もする。極端な話、何か支援システムを作って補助金をもらい、それなのに女性研究員の採用が一向に増えないという研究組織があったなら、補助金は返還するのだろうか。