モンゴルの音楽を聴く

今日の午後、人間文化学部の公開セミナーがあり、モンゴルの民族音楽がテーマであったので、研究室を抜け出して聴きに行った。そう、セミナーと言ってもその実態はコンサートである。学内でプロの奏する生ホーミーが聴けるとあっては行かないわけにいくまい。これも役得だ。
演奏者は関西の某音大講師を勤めておられるモンゴルの演奏家の先生と、モンゴルに留学して歌唱法を学んだ日本人演奏家の二人。ホーミーの他に、オルティンドーという、ちょっと馬子唄か何かに似た長くて小節の効いた民謡が聴けた。楽器は馬頭琴口琴、リンボという素朴な横笛などである。この方は特にリンボの演奏が専門であるということで、何曲も演奏していただけた。聴いてびっくりしたのは、音色もさることながらその技法のレベルである。まず、基本的に循環呼吸を採用し、曲の初めから終わりまで一度もブレスをしない。オルティンドーは馬子唄のように長々と歌うので(多分にアドリブも入るのだろう)、歌唱者と一緒にブレスをして曲を途切れさせないため、循環呼吸にするのだそうだ。ブレスがないと、人間の呼吸のリズムが旋律に表れないので、本当に風か水の音のような自然の音の表現ができる。それから、馬の走る蹄の音を表した曲では、タンギングの絶技が披露された。「ウィリアム・テル」も真っ青の猛烈な速度である。普通のオケのフルート奏者でも、あそこまで早く正確なタンギングの出来る人はザラにはいないんじゃないかと思った。本当に素晴らしい演奏の妙技を堪能できた1時間だった。