Regel, Andreev両博士の来室

午後,寄生虫研究者のKira Regel博士,鳥類研究者のA. Andreev博士のご夫妻がロシア・マガダンから来室された。Andreevさんは極東の渡り鳥の研究のために何回も来日されており,昨日琵琶湖環境科学研究センターで講演をされたばかり。Kiraさんは初めての来日だろうか,ともかく私は両者とも初対面である。宮城の雁の里親友の会のI内さんと,日本語のできるロシア人のF. E. Viktorovnaさんが同行されてるので,通訳体制はばっちりである。
来室の日程が決まったのは昨日だったのだが,鳥などに関心のありそうな学生に連絡したところ,7,8人が来てくれた。中でも,N間さんの所でライチョウを研究している学生のSさんは,自分の研究のプレゼンを用意してやって来た。Andreevさんは,今はガンカモ類の研究と保護を中心に活動されているが,もともとライチョウを専門に研究していたそうである。両博士の詳しい研究内容は私はあらかじめ知らなかったのだが,研究面で関連のある人が大学にいたのは幸運だった。
午後3時頃に来室された両博士は二人とも闊達で親切な感じの方だった。学生がたくさん来ているのを見て,Andreevさんがシベリアの環境と鳥について話をしてくれることに。パソコンの画像を広げながら,とても懇切丁寧な解説をしていただいた。私も一緒に話を最後まで聞きたかったが,Kiraさんが「話が長くなりそうだから,私たちは別に仕事をしましょう」と耳打ち。実験室で,日本の寄生虫を見てもらうことにした。
Kiraさんは,いろいろな寄生虫の中でも,ガンカモ類に寄生する条虫が特に専門だということだ。それならこれ幸いとばかり,夏休みに作ったカルガモの条虫の標本を見てもらうことにした。私も一応は同定を試みたものの,Hymenolepis科ということ以上はわからず,何種類なのかもわからないまま放り出していたものである。日本には条虫分類の専門家がいないので,国内には教示を仰げる人がないのだ。
頭節部分などの同定しやすそうな標本をいくつか検鏡してもらうと,資料もなしにあっという間に4,5属の名前が出てきた。さすがにプロである。カルガモの条虫は,私が想像していたより多様度が高いようだ(あとで日本の鳥類寄生虫のチェックリストを見たが,少なくとも日本のマガモ属からは初記録になる種も含まれているようだ)。生活環のわかっているものを聞いてみると,中間宿主はケンミジンコやカイミジンコであるということだ。なるほど,田んぼや池でも生活環が回るのだろう。条虫がもっとちゃんと同定できるようになったら,鳥のえさ場の特定にも使えるかもしれないなあ。2時間ほどかけて,条虫同定のポイントなどをいろいろ教えていただく。ちゃんとした同定が必要なら,標本か,しかるべき同定部位を撮影した写真をマガダンへ送れば見てくれる,とのこと。やったあ。
6時から会議があったため,あまりゆっくり談笑している時間がなかったのと,Andreevさんの話を十分聞けなかったことはちょっと残念だったが,条虫の見方などについては大変勉強になった。文献も送っていただけるということなので,それらが揃ったら,もう一度ゆっくり同定をし直して,報告の必要がある種類は報告しようと思う。最後に,Kiraさんにオリジナル寄生虫絵はがきセットをプレゼント。「私も自分の寄生虫でこういうの作ろうかしら」と仰っていた。ぜひぜひ,作ってくださいな。