標本流儀

昨晩は寄生虫学会北日本支部会の懇親会に参加しました。本来,北海道の会員のみで実施される会ですが、今年はオンラインなので全国どこからでも参加自由。そこで、事務局のS先生が「標本を語り倒す」という、飲みながら標本の作り方について自由にトークする企画をしていただきました。日本の寄生虫学教室は山口左仲メソドを引き継いでいるところが多く、標本は圧平するのが基本になっています。虫体が変形するとして海外の研究者からは批判されることが多いのですが、それでも細部の観察のしやすさでは圧平標本の方がダントツに上です(実際に海外の新種記載論文を見ると、吸盤・消化管・卵巣・精巣・卵黄腺程度しかスケッチしていない場合もあり、もっとちゃんと観察しなよ…と思うこともしばしば)。圧平すると虫体が伸びるので確かに計測値は大きくなりますが、同じやり方で作った標本なら比較可能なはずですから,私も圧平標本は別に悪くなく、「寄生虫標本とはそうやって作るもの」と決めてしまえばよいだけと思います。圧平しない方がよいのは条虫の頭節など、三次元的な構造の観察が重要な場合だけでしょう。