もう一本作って仮登録した。近日中には本登録されるそうなので,興味のある方はご覧ください。
さて,行動学の研究者で寄生虫に興味のある人は多いだろうが,ほとんどの場合は寄生を受けた宿主の行動に興味があるのであって,寄生虫そのものの行動を見ている方は少ないだろう。特に内部寄生虫の場合は,宿主を殺さないとまず虫か見えないし,宿主を殺すと虫だって長くは生きていない。分類をする身としては,良い標本を作るため,虫が見つかると固定液へ直行させてしまうから,生きた虫をしみじみ眺める機会というのはあまりないのである。
寄生虫そのものの行動学のパイオニアは,米国寄生虫学会のEditorial Boardの一人であるM. V. K. Sckhdeoだ。その研究の話は「パラサイト・レックス」(光文社)の中に入っている。体の中で動き回る寄生虫の行動ルールを見つけるという基礎的な研究の難航ぶり,そして「寄生虫の目になって環境(宿主)を見ること」がカギであることが,実に面白く語られている。動物の行動をじっくり観察して,その生物の目になって見てみるというのはある意味とてもナイーヴな研究の入り口だが,寄生虫に関して言えば,そのナイーヴさを貫くことさえも,強固な意志を必要とする立派な研究スタイルであると言えるかもしれない(今のところ)。
- 作者: カールジンマー,Carl Zimmer,長野敬
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2001/03
- メディア: 単行本
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