寄生虫生態学の大御所Marcoglieseの論文をチェックしていたら,こんなのに行き当たった。
deBruyn, A. M. H., Marcogliese, D.J., Rasmussen, J. B. The role of sewage in a large river food web. Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Science, 60: 1332-1344 (2003) やっぱ,寄生虫屋が生産性と食物網の関連づけの研究やってるんだ。さすが。
斜め読みしたところ,都市の処理排水が流れ込んで富栄養化した流域と,同じ流域の別水域で魚の成長量と食性,安定同位体比を調べたもの。処理水に含まれるTN, TPのうち(TN: 8000t/year, TP: 450t/year),食物網に取り込まれるのは推定数%以内だが,二次生産は参照水域に比べてざっと5倍の増加。方法論は難しくなさそうだが,数字が沢山出てくる論文なので計算機を横においてゆっくり読む必要あり。都市処理水に注目したのは目のつけ所がよい。栄養塩の供給量がほぼ完ぺきに押さえられるし,しかも周辺からちょろちょろ流れ込む栄養塩とはケタ違いに量が多く,かつ同位体比が異なるため食物連鎖中での挙動をトレースできるからだ。今度方法論をじっくりチェックしてみよう。