かつ消えかつ結び

今年は自学科だけでなく、隣の環境政策・計画学科で大学横のI上川の湧水地形について調べた院生Iさんの審査も担当させていただいた。I上川は天井川で河床が周辺の土地より高いと言われているが、川の中に湧水がかなりある。いったいその水はどこから?と不思議に思っていたのだが、Iさんの結果を見てようやく合点がいった。確かにI上川の河川敷は堆積物が多く堤内(堤防を挟んで川と反対側)より高いのだが、川の澪筋の部分は掘られて若干深くなっており、かろうじて周囲の土地より深くなっているのである。水はそこから湧いているので、やはり川の周辺から浸透した水が河道内に来ているのだとわかった。それにしても湧水の場所と周辺の土地の高低差は非常にわずかで、一度大水が出て堆積物が溜まれば、湧水の出口は簡単に移動してしまうだろうということが容易に想像できる。湧水はその時々に形成された窪地に湧き出し、それは河道内だけなく河道外(堤内)である場合もあるだろう。なんと泡沫のようなハビタットだろうか。扇状地河川における生物ハビタットの動的なイメージと、それを保全することの難しさ(個々のハビタットではなく、動的なシステム全体を維持しなければならない)がようやく腑に落ちたような気がした。

第38回生態学・疫学談話会案内

昨日、「寄生虫生態学・疫学談話会」を発送し、同時に来週の次回談話会の案内をしました。好評につき、今年もハイブリッドで開催します。日時は3月8日(金)16時30分から、順天堂大学からZoomで発信します。自由集会ですので学会に参加しない方でも来場OKです。参加ご希望の方はm-urabeまで直接ご連絡をいただければ、案内をお送りいたします。

食料難民

午前中の仕事が終わり、さあ昼ごはんだと思って生協に行ったら閉店。すっかり忘れていたが、今日は一部の学部でまだ入試をやっているので一般学生は登校せず、生協も閉まっているのだった。仕方ないので外のコンビニまで買いに行ったが、大学の所有地にあった直近のコンビニが昨年5月に閉店してしまったため(経営不振だったらしい)、雨混じりの寒風が吹き荒れる中、自転車で川向こうまで行く羽目になった。お願いだからもう一度近くにコンビニ開店してください(切実)。

花を添える

今週初めに学位論文公聴会を行った院生Jさんの学位論文主部が受理されました。教授会での報告に間に合ってよかったです。予備的なミトゲノム解析の論文2本で本学の学位申請基準はすでに満たしていますが、やはり主部が受理済みになっていた方が気分的に良いものです。

論文の内容はロシア・チャニー湖の湖水中セルカリア定量のための定量PCR方法の開発(オリジナルプライマー・プローブの開発、感度と特異性のテスト、湖水サンプルからの検出の確認)です。本当は2020-21年に野外でセルカリアの定量をする予定だったのですが、コロナとその後のロシア情勢のため渡航不能となり、研究協力者から送ってもらったサンプルの遺伝的解析だけで論文を書かなければならなくなりました。方法論のみの論文となりましたが、なんとか受理されてよかったです。

Janelle Laura Junio Gacad, Natalia I. Yurlova, Shoko Tanabe-Hosoi, and Misako Urabe: Trematode species detection and quantification by environmental DNA-qPCR assay in Lake Chany, Russia. Journal of Parasitology (in press)