メダカハンター

3月に入ってから暖かいため、マルが餌ねだりをするようになりました。まだ季節的には少し早い感じもしますが、食べたがるようなら与えてよいとのN堀さんのアドバイスにより,様子を見ながら少しずつ餌をやりはじめました。たまたま一昨日、別の研究室でご用済みになった実験用ヒメダカが大量に出たと聞き、餌として10尾ほど入れてやりました。今朝はまだほとんどのメダカが残っており,やはりまだあまり食べないかと思っていたのですが、さきほど帰宅しようとしてふと水槽を見ると、マルがガラスをひっかいて餌をねだり、メダカが一匹もいません。半日の間に全部捕まえて食べてしまったようです。あまりの食欲旺盛と名ハンター振りにびっくりしましたが、すぐに追加のメダカを入れてやりました。それから30分ほど様子を見ていましたが,早くも3匹ほど食べてしまいました。たいしたものです。

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魚を待ち伏せるマル。きりっとしたいい顔をしています。

 

寄生虫のお味

今、私たちの研究テーマの一つに「寄生虫が生態系の物質循環にどれほど貢献しているか」というのがあります。このテーマは多くの研究者が宿主操作とか食物網の複雑さなど、いろいろなアプローチで研究していますが、私達はもっと単純(?)に「寄生虫は上位捕食者にどれほど食われているのか?」という視点から研究をしています。寄生虫といえども一生他の生物の体内にいるわけではなく、あるステージで外界に出てきます。特に私がずっと研究対象にしてきた吸虫のセルカリアは、宿主の貝から相当に沢山の量が水中に放出されることが知られており、それが他の小型捕食者に食べられることで摂食リンクを形成しているのではないかという指摘は、実はかなり昔からあります。最近の関連論文を探していたところ、セルカリアは捕食者の餌として申し分のないことを示すものがいくつか出ていることがわかりました。

link.springer.com

ヤゴにセルカリアとミジンコを与えた場合、どちらも遜色なく成長した、という論文です。餌としてのセルカリアの質をEFA(必須脂肪酸)で測定しています。数値を見ただけではそれが多いのか少ないのかピンときませんが、少なくとも一般的な動物プランクトン並の栄養はあるようです。ヤゴにとっては結構おいしい餌なのかもしれません。

www.cambridge.org

これはセルカリアを捕食性のケンミジンコに与えたら他の餌の場合と同様によく育って繁殖した、という論文です。やはり食べ物として不足はないようです。ただ、濾過食者のミジンコに与えた場合はエラが詰まって死んでしまったそうです。実験には尾の長い岐尾セルカリアが使われたので、フニャフニャしすぎていたのでしょうか。

地味な研究ですが、セルカリアを栄養として捕食者がどのくらい成長・繁殖できるのかは寄生虫から上位捕食者へと物質の流れを考えるときに絶対に必要な情報です。これも生物部などの研究テーマとして面白いかもしれません(大学生でもよいですが^^;)。

モニタの前で

この土日はちょっとだけ仕事しながら「びわ湖ホール」での「神々の黄昏」無観客講演生配信をたっぷり堪能させてもらった。ワーグナーは重すぎて普段(聞くだけ)はあまり好まないのだけれど、舞台演出は波や霧の映像が大変美しくてこれも良いもんだなと思いつつ。

寄生虫の動画を見ましょう

今日の午前中は教材の魚を探して、市内でも品揃えの良い魚屋を2軒回りましたが、残念ながら目的の魚を見つけられませんでした(冷凍で出回っているものなので、季節外れはないと思うのですが…)。残念ですが,生の寄生虫を取り出すプロセスを記録することができませんでしたので、今まで「動物行動データベース」にアップロードした寄生虫の動画にリンクをしておきます。

カワニナから泳出するEchinochasmus属のセルカリア

http://www.momo-p.com/index.php?movieid=momo050831es01b&embed=on

Echinochasmus属セルカリアの走光性

http://www.momo-p.com/index.php?movieid=momo050831es02b&embed=on

 

川や水路でカワニナを見つけたら少し多めに(50〜100個ぐらい)拾ってきて,水槽に入れて明るく暖かいところに数時間置いてみてください。運が良ければこの面白いセルカリアに出会うことができます。このセルカリアの行動に関しては隣県のG高校生物部の皆さんが研究を続けており、いろいろな面白い発見をしてくれています。

ナマズ腹口吸虫のセルカリア

http://www.momo-p.com/index.php?movieid=momo081125pp01b&embed=on

これは宇治川矢作川など、限られた場所でしか見ることができませんが、外来の貝につく外来の寄生虫です。胴体をぶんぶん振っていますが、野外では頭の先を川底につけてお尻側を高くはね上げ、伸縮自在の尾を水中に延ばし、尾の先に体をぶら下げてクモの子のように浮遊するようです。

円葉条虫の一種(幼生)

http://www.momo-p.com/index.php?movieid=momo081007un02b&embed=on

カワウ等の鳥につく寄生虫の幼虫です。頭にある冠のようなものは「額嘴」といい、宿主に付着するための器官です。そう言えば、一昨年の国際寄生虫学会で、「条虫の額嘴がフグのミステリーサークルにそっくり」という研究発表をした面白い方がいました。このような構造ができるのに物理的な必然性があるのかどうかわかりませんが、どうでしょうか。

www.ncbi.nlm.nih.gov

題材を探して

大学の行きと帰りにそれぞれ違う魚屋に立ち寄り、寄生虫観察に使う魚があるかどうか探してみたが、どちらにもなかった。そんなに珍しい魚ではないと思うのだが、海なし県ではあまり需要がないのかしら。

論文を書きながら

本来なら生態学会の会期中のはずだった今日明日、素晴らしいことに予定が何もない。次の論文執筆(今度は和文、数年前の卒業論文を微修正で)の合間に、昨日書いた「中高生向け寄生虫観察記事」の案を考える。計画通りうまくムシが取れたなら明日の晩にアップする予定。