一気に読んでしまいました。明治期から戦前までの太平洋離島の開発史、というより収奪史ですが、「離島の生態」と「経済」と「国際問題」をみごとに連結しています。小笠原・鳥島尖閣諸島での一獲千金のアホウドリ捕獲から始まって、これらの島が枯渇したあとのハワイ近海での密猟、労働者の実態(かなり悲惨です。悪質な雇用者では、船で羽毛だけを回収し、労働者は島に置き去りというケースも頻繁にあったそうです)、南方諸島の海鳥およびグアノ資源をめぐる日米の軋轢へと時代は進んでいきます。特に、今でも少年向け冒険物語のように読まれている「龍睡丸漂流記」の裏事情に対する著者の分析は見どころ。そのほか、生態学をやっている方とすれば、海鳥類の個体群に短期間で非常に大きな捕獲圧が生じた訳ですから、この海域のリン循環にどのくらい影響があったか気になりますが、だれか試算した人はいるのでしょうか。