採点作業を終了し,一息つく。
さて「一息つく」という言葉の通り,リラックスには呼吸が付き物である。昨日も研究室の学生たちが卒論発表会のリハーサルをやっていたが,あがりやすい人は緊張で声が出なくなったり,読んでいる原稿の文が変なところで途切れてしまったりしがちである。これは、息を吐く時に必要な「横隔膜を弛緩させる」という所作までが緊張のためにできなくなってしまっているからだ。なぜ緊張すると呼吸が止まってしまうのかは、比較解剖学的な解釈ではこういうことらしい。脊椎動物が水中でえら呼吸をしていた時は,鰓の運動は不随意筋が司っていた。呼吸は意思に関係なく四六時中続ける必要があるから、これは理に適っている。しかし、肺呼吸に移行した時,肺を動かす筋肉というものがもともと存在しなかったため,本来は運動に使う肋骨や腹回りの骨格筋をえいやと呼吸用に流用してしまったのだそうな。そのため、哺乳類では運動と呼吸の両立がかなり難しくなってしまったという(鳥は循環呼吸を採用してこの問題を解決した)。呼吸を楽にするためには意識して体の緊張を解かなければならないし、逆に息を吐くと体をリラックス状態にすることができる。あがりやすい人は、プレゼンの合間に意識して息をしっかり吐き出すようにしてみるとよい。卒論発表会の本番でお試しあれ。
- 作者: 三木成夫
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- 発売日: 1992/09
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