水産試験場のKさんが、ビワマスの寄生虫検査の方法について相談に来られた。有名なサクラマスの日本海裂頭条虫は海産種である可能性が高いと言われており,私の知る限りでは陸封型のビワマスを食べて条虫に感染した症例報告は(少なくとも近年は)ないはずである。それに、日本海裂頭条虫は健康な人なら感染してもほとんど無症状なので、むやみに恐れる必要はまったくないムシなのだが、やはり消費者からは警戒する声がしばしば聞かれ、新鮮なビワマスをわざわざ一度冷凍してから客に出す店も存在するのだそうだ。そこで、水試ではちゃんと魚の検査をしてムシがいないということを証明し、安心して販売できるようにしたいという。しかし、何サンプル解剖したところで、「いない」ということは証明不可能であるし、むしろ、魚を食べてムシに当たったら、間違いなく天然物で冷凍保存もしていない新鮮な魚の証拠であるから、その店は評価されるべきだと思うのだが、どうだろうか。
これをお読みの方は、新鮮なビワマスの刺し身を食する機会があったらぜひ大いに賞味していただきたい。そして、万一ムシが出たら、ぜひこちらにご連絡頂いて共著論文にしましょう(笑)。