久々の貝類学会

10年少し前までは、某副会長が「この学会も最近ようやくアカデミックになってまいりまして…」と嬉しそうに挨拶したり、質疑応答タイムに「最近はDNAなどという目に見えないものを信じておられる方がいるようですが…」という発言が飛び出したりしていたこの学会、さすがにこういう逸話は今では笑い話になったが、懇親会のくじ引きで賞品に貝が配られるといった独特のノリはまだ健在だった。
タイワンシジミについて毎年いいポスター発表をしている神奈川県のK高等学校の生物部が、今年はコモチカワツボの研究もスタートさせたらしい。コモチカワツボは困った外来種ではあるが、ごっそりとれる上にクローン生物であり、小型でライフサイクルも比較的短いので、実はミジンコなどと同じように実験生物としてすぐれた点が多い。実験室外に逸脱させないように十分注意した上で、ぜひ生態解明や防除策立案のためにいろいろな実験をやってみてほしいと思う。高校の設備でもかなりいろいろなことができるだろう。それにしても、コモチカワツボの密度を実感してもらうため、10cm四方の紙に800個の黒ゴマを撒いた画像を100枚コピーし、8万個体/㎡の密度を再現した展示はインパクトがあった。
K藤さんが近々出版予定の日本産イシガイ類図譜の試し刷りを見せてくれた。一昨年の学会でお会いした画家Nさんの筆(ペンかも)になるもので、写真では不可能な隅々まで細かくとらえた図版が、地味ながら実に美しい。やっぱり原画展をやってほしい。