琵琶湖産カワニナの感染実験の結果が予期しなかった方へ転がっていている。当初は,卵胎生で分散力の小さいカワニナ類の方は地域間でかなり遺伝的に分化しているだろうから,感染耐性の有無はカワニナの種間差(この場合形態種)よりも地域差のほうが大きいのではないかと思っていた。ところが,感染結果は見事に種によって違っており,地域差はほとんど検出されない(要するにありがちな面白くない結果になった,と言えないこともない)。野外では地域によって感染率の高い種類が違うのだが,ということはこれは寄生虫側に違いがあることになる。寄生虫は第二中間宿主と終宿主によってかなり分散するから,こちらの方が湖内で種分化しているとしたら,ちょっと妙な気がする。
以前も書いたようにカワニナ類を始めとする淡水貝類のDNAは,形態とも地理とも一致しないめちゃくちゃなパターンを示すことが多いのだが,こと寄生虫で見る限り,形態種と感染耐性の関係は意外なほどクリアだ。この辺もどうなっているか,攻めねばなるまい。時間かかりそうだけれど。