ホンモロコ養殖水田見学記

今日は、ちょうどタイミングのいいことに、FWでの校外授業で、K津市のホンモロコ養殖水田を見学に行った。ここへのコメントのおかげで、私も事前に問題点がある程度整理できていた。
少なくとも、滋賀でホンモロコを水田で継代養殖するようになったのは近年のことらしい(それ以前は産卵槽で孵化させた仔魚の放流)。繁殖可能な親魚を水田にキープするということは、常に逸脱魚と周辺のタモロコとの交雑の可能性を含んでいる。今日見学させてもらった水田でも、尋ねてみると周囲のため池にタモロコが生息しているということであったが、案内して下さった担当の職員の方に、交雑の可能性について聞いてみると、真剣に「タモロコさんにとっては迷惑なんでしょうかね」と答えて下さった。もし、養殖魚による交雑のリスクがどれほどかということを(琵琶湖周辺では、自然状態で遺伝子交流が起きている可能性がないとはいえない)ちゃんと示せば、対策は検討されるだろう。なお、ホンモロコの養殖は他県でも行われているので、タモロコ地元個体群への遺伝子浸透の点ではそちらのほうが問題があるかもしれない。
水田養殖による形態の変化について尋ねたら、少々苦笑いを交えつつ「ヒゲが伸びるんですよ」とジェスチャーをしてくれた。形態の変化は2,3代で起こるそうであるから、おそらく体形にかかる選択圧の変化か、もしくは表現型レベルでの変化で、遺伝的には大きな(不可逆的な)変化はないのではないかという気がする。そうだとすると、体形変化の問題は、生物学的にどうというよりは、ホンモロコという「ブランド」に傷がつくという恐れなのかもしれない。養殖物と天然物の差は、私なぞより、当の職員さんがずっと実感しておられるようで、私が体形について質問している間苦笑いが絶えず、しかも最後に「ぜひ天然モロコを食べてみて下さい。子持ちのをね」と念を押された。体形を天然魚に近づけるための養殖技術上のアイデアはまだないそうである。