今年度最後の学会

寄生虫学会で、花の盛りもやや過ぎた東京へ。
今日は分類形態談話会と生態疫学談話会。分類形態談話会では岩手大学Sさんからアジア産カンテツの起源に関する話。日本のカンテツは遺伝的多様性が少なく、ほぼ有史後に侵入した外来種である由。また、日本産を含む東アジアのカンテツはユーラシア北部に分布するF. hepaticaと南アジアに分布するF. giganticaの雑種由来と推定される。どちらも日本のヒメモノアラガイに感染力を持っているのだが、実験的にこの2種の交雑個体を作ると、第一中間宿主への適合性を失って感染力がなくなる場合があり、F2でほぼ全部ダメになるということ。やっぱり寄生虫と共進化しているのは終宿主じゃなくて第一中間宿主の方らしい。雑種崩壊がみられることは寄生虫と宿主のマッチングを考える上で面白い現象である。何か絶対にホモで持っていないと宿主への侵入ができなくなる遺伝子でもあるのかしら。
生態疫学談話会では、一緒にチャニー湖へ行ったK谷さんに演者をお願いした。寄生虫学会で食物網だの物質循環の話がされるのはおそらく史上初と思われるので、初心者向けに丁寧に安定同位体比による食物網解析の話をしてもらった。寄生虫同位体比がヘンであることに関して、Cについては寄生虫も嫌気性細菌と同じようなTCA回路の逆転(還元的TCA回路というらしい)をやることがあるという情報をいただいた。N代謝についてはまだ不明。
もう一つは神戸大学修士2名による、C. armatus寄生によるカワムツの行動変化の話。これはどう見ても生態学会か行動学会向けの話題。まだフィールドでの現状から少々乖離しているような点はあるが(特に、感染魚が本当に終宿主に襲われているのかどうか)、面白い現象なのでもっと広く知ってもらえたらよいと思う。
その後は、いつもよりややおとなしめの「百本の会」。今日は医学部の比率が例年より低く、話題的には楽しかった。今日は実家へは帰らず、そのまま隅田川河畔のホテルに泊。