江の島水族館

正月休み、久々(20ウン年振り)に地元の江の島水族館に行ってみた。2年前に「新江ノ島水族館」と名前が変わり、リニューアルオープンしたということ。
旧江の島水族館は昭和29年の開館で、言うまでもなく日本でも指折りの伝統を誇る水族館だ。水族館の定番であるイルカショーも、ここと千葉の鴨川シーワールドが日本の草分けだし、近頃の癒しブームで大人気のクラゲの飼育技術を確立したのもここだ。それから、相模灘の深海魚の採集や飼育の記録も数々持っている。私がリュウグウノツカイやメンダコをはじめて知ったのも、ここの標本を見てのことだ。
それから、江の島水族館といえば、その昔のアシカショーで、忘れられない演出があった。その時の出し物は「アシカのオリンピック」というタイトルで、聖火点火と選手宣誓にはじまり、バレーボール、平均台床運動などのアシカショー定番の「種目」があった。ところが、最後の競技種目がなんと「競泳」だったのである。
たしかプールは15メートルぐらいで、5頭のアシカが出演していた。「よーいドン」で一斉に飛び込んでから、反対側のゴールに跳び上がるまで、わずか3秒ぐらい(だったと思う)。よちよち歩きの陸上のアシカからは信じられない速さで、見ていたお客さんから、他の「芸」に対する拍手とは全然違う、心底の驚きの声が上がった。思えば、あれは旭山動物園ですっかり有名になった、動物の能力を見せる「行動展示」の先取りだった。当時、あの演出を考えた方はすばらしい見識の持ち主だったと思うし、いまだに私はあれを上回るショーを水族館で見たことがない。
で、それから20有余年後の新装オープンである。こんどはどんな工夫が見られるかと、かなりの期待を持って乗り込んだ。
…期待しすぎたかな…
確かに、水族館の展示は今風に(ただし、2004年新装開館にしては新味は薄い)キレイになっている。JAMSTEC提供の深海生物の生体展示は面白かった。それから、例の鉄のよろいを着た貝、スケーリーフットの実物の標本。
でも、正直言って、オールドファンはかなり落胆もした。最大の理由は、旧江の島水族館時代に積み重ねられた研究や飼育の実績を見ることのできる展示がどこにもないことだった。イルカの展示ひとつだって、今までに何頭のイルカを飼育し(各種合わせると、多分100頭は下らないのではなかろうか)、何頭繁殖したのか、ショーの内容や調教方法は時代とともにどのように変遷したのか、等々、歴史ある水族館ならではのネタがいろいろあるはずなのに、何もない。もちろん、リュウグウノツカイやメンダコもどこに眠っているのか、展示から外されていた。有り体に言えば、「近頃どこにでもある水族館」になってしまった、という印象がぬぐえない。同館のHPを見ると、どうやら「新江ノ島水族館」は、旧「江の島水族館」の単なる新装開店ではなく、旧館を閉館して、全く新しい水族館として開館したらしいのだが、その結果がこれだとしたら何とももったいないし、さびしい。もう少し何とかならんかったものか。