琵琶湖とシジミと寄生虫

昨日,大学の環境科学セミナーの2回目で「琵琶湖と共生する漁業」という講演会があった。プレゼンテーターは院生K君と,実際に琵琶湖で長年漁業に従事しておられるMさんである。
Mさんの家は,もとはシジミ漁で生計を立てておられたそうだが,昭和60年ごろにはシジミもイケチョウガイもとれなくなり,魚漁に転向したという話であった。貝類は元来琵琶湖の漁獲の大部分を占めていたというのは,漁業統計を見ればすぐに分かる。今ではイケチョウガイは淡水真珠養殖所以外では見られなくなり,シジミも,南湖はもとより北湖でもとれる場所が減少してきている。Mさんの印象ではシジミの減少の原因は砂場の消失で,水質悪化によるヘドロの堆積に加え,河川からの流砂の減少と湖内での大規模な採砂が原因ではないかと考えておられた。
私はカワヒバリガイに随伴してきた移入寄生虫を研究しているのであるが,何の経済価値もないカワヒバリガイを輸入する人はいない。カワヒバリガイは輸入水産物にまぎれて侵入したとしか考えられないのである(従って,カワヒバリガイの侵入を防ぐには生鮮水産物の輸入に際して法的な検査体制をかけるのが有効なはずで,特定外来生物に指定されはしたものの,外来生物法ではどの程度の実効力があるのか疑問である)。
外国産シジミの輸入量が拡大したのは,↓のサイトによると1990年頃らしい。日本にカワヒバリガイの生息が確認されたのが1992年だから話はぴったり合う。現在では国産(ヤマトシジミ含む)に匹敵する量が輸入されているそうだ。ということは,ほかでもない,それだけ国産シジミの漁獲が減り,需要を賄えなくなったということである。イケチョウガイも事情は同じで,現在は琵琶湖で母貝が採れないので,かなりの母貝を輸入のヒレイケチョウガイに頼っていると聞く。
となると,淡水の外来貝類の問題の根本には,国産種がとれなくなったことがある。シジミに関して言えば,最大の経済種であるヤマトシジミの生息地,汽水環境も含まれる問題だが,ともあれ,シジミやイケチョウガイは,国内で十分な漁獲があれば,輸入する必要は全くないはずなのだ。今後さらに,輸入水産物に伴う外来種が持ち込まれるのを防ぐには,国内での貝漁の復活をめざすのが筋だろう。魚類に比べて注目されることの少ない貝漁だが,その減少がどういう波及効果を及ぼしているか,もっと考えなければいけないと思う。

http://mirabeau.cool.ne.jp/shiohigari/shinagawa/shijimi7.html