川虫実習最終日,データのまとめである。今年は水生昆虫が少なく、なかんずく大型個体が非常に少なかったのは先週書いた通りであるが、その一方で、この実習で今年初めて採集された生物があった。アユの孵化仔魚である。
勿論,普通であれば魚類は捕れてしまっても(ベントスではないから)ノーカウントであるが,アユ仔魚に関してはちょっと分布を見てみたかったので記録をつけてもらった。実習では合計4匹の仔魚がとれたが、採集地点はすべて早瀬か平瀬の流心部であった。つまりは琵琶湖へ流下中の個体を捉えたことになる。ちなみにベントスのサンプルの中に魚卵はまったく見られなかったので,実習日(10月12日)には、大部分の孵化は完了していたと思われる。水産試験場の今年のデータを見ると、アユの産卵は9月中盤から始まり、10月上旬にはだいたい終わっていたようなので,孵化日数を2週間とすると、今回捕れた仔魚は流下の終盤といったところだろう。

絵で分かる寄生虫の世界

絵でわかる寄生虫の世界 (KS絵でわかるシリーズ)

絵でわかる寄生虫の世界 (KS絵でわかるシリーズ)

届いたので早速目を通しました。まず最初に一つ言っておくと、「絵でわかる」シリーズではありますががっつり字もあって専門性の高い本です。帯紙には「寄生虫学ぼう」とありますが、実際のところ「寄生虫学ぼう」と言った方がはるかにぴったりなので、読者としては大学生以上、特に医学・獣医学部寄生虫を学ぶ学部学生さん向けぐらいの内容です。第3章「代表的な寄生虫の生態と生活環」は、人畜寄生虫に留まらず広く寄生虫の分類を手がけてこられた長谷川先生ならではのボリュームと内容の濃さで、日本語で読める医学・獣医学寄生虫の分類・生活史のまとめとしてはベストでしょう。私でもこの本の3章、特に線形動物の各目の解説は「ありがたや〜」と思います。一般生態学・進化生物学を勉強する学生にとっては、分類学のウェイトが大きすぎるように感じるかもしれませんが,第1章の「寄生適応」に紹介されている寄生虫の呼吸経路の多様性(解糖系→TCA回路→電子伝達系というパターンに当てはまらないものがいくつも存在)などを見ると、寄生虫生態学の文脈で理解する時にはその生物学的独自性をどこまで踏まえておくべきなのか、きっと認識を新たにするのでは?と思います。実際に寄生虫分類学生態学をやり始めた学生に、手頃な教科書としてお勧め。

同輩であるkensuke_nakata氏による子供向け科学絵本。個人的には、「毛虫の毛を刈ってその意義を調べた」という研究が面白そうで,元論文を読んでみたくなりました。なんでも鼻毛カッターで刈ったそうで(笑)。