安威川ダム建設地見学

大阪のNPO法人Nature WorksのIさんのお誘いで、大阪の安威川に建設中のダムサイトの見学に行った。がっつりダム建設地に行くのは筑後川以来。安威川オオサンショウウオ生息地としても知られているので、あわよくばハンザキ虫も探そうという魂胆。

安威川ダムは大阪府管轄のダムで、地方自治体管轄ダムの中では中規模程度というお話だったが、国直轄ダムよりは規模も集水面積も小さい。移転家屋は50数戸という話である。当初の計画では上水道の水源および治水目的の多目的ダムだったのが、水源需要がなくなったために治水専用ダムに変更され、堤体高も7m下げられた由。と言っても、「河川機能の維持」のためになぜか貯水量が設定されており、実際のところは下流域農業用水の補充をするため池ダムの役割も兼ねるという。私個人としては治水ダムとしての能力を最大限に発揮するためにも、滞水による河川環境の変化を抑えるためにも、平常時は貯水しない方がよいと思うのだけれど、一応そういうことは検討した末の結論だという。平常時の滞留時間は3日程度の計算だそうだが、天ケ瀬ダムの経験から言うとその程度の時間でも夏場なら成層する。ここは上流に砕石場があり、そこからの濁水が流れ込むことが多いそうなので、透明度が下がるから、成層の影響は天ケ瀬ダムより強くなるかもしれない。低酸素化対策として曝気は行うそうだが、そうするとダム湖の全域がプランクトンにとって好適環境となり、下流へのPOM負荷が増える可能性がある。まあ、滞水すれば生態系への影響を無にはできないので、あとは彼我への影響を見ながら対策のさじ加減をするしかないのだろうけれど。土砂還元とフラッシュ放流は行う予定だそうだが、実施時期や規模については未定の由。フラッシュ放流は、河床に撹乱を与えて河川生態系の維持のために行うもので、その観点からはできるだけピークを高くするほうがよいのだけれど、当然下流住民への配慮も必要になるので、実施方法を十分に検討して欲しい。

堤体の工事現場。写真の外には、かつてのデンデンムシ生息域が消滅して寂しげなN井さんの姿があった。

これは堤体本体の着工前に、川の流路を一時的に変えるためのバイパストンネル。長さ500m超、堤体完成後は塞がれる。

バイパストンネルの中、入り口から100メートル程のところに、機材に轢かれたと思われるモリアオガエル?がおり、オサムシが来ていた。これを見て一行(全員いい年のおじさん・おばさん)は「○○さーん!早く来て!」「こんな遠くまで肉の匂いわかるんですねえ」と大はしゃぎ、写真撮影大会が始まってしまった。

ダム湖の上端あたりには、放棄棚田等を利用したビオトープ水田が作られている。水位変動の激しい利水ダムであればこうはいかないだろうが、洪水時以外は水位変動が比較的少ない治水ダムであれば、このように周囲の用地を積極的に保全に生かすことも可能なわけである。今後、ダムが運用され始めたらどう変遷するか、ちょっと興味が出てきた。