くたばれ人脈

昨日の会で,あるOBから「研究室の人脈は大切にせなあかん」というようなことを説教された.私は思考回路がとろいので,今時何を言う御仁かと反発はしたものの,その場で反論できなかった.そこで,ここで少し考えながら反論をしてみよう.今回はあえて「毒」カテゴリに入れない.
今求職中の人ならよくわかると思うが,少なくとも日本の場合(海外の事情は知らない),研究職ポストを得るのにコネが物を言うケースは実際少なくない.私は,ポスドクも含めて今まで4つのポストについたが(30代で3回退職金をもらった),いわゆる「完全公募」で職を得たのは,そのうち2回だけである.非公募の採用が一回,あとは,公募ではあるが採用側の意向が非常に重視され,事実上,決め撃ちに近い採用だったケースである.ほとんどの大学で公募が原則となった現在でもこんな状態であるし,昔はもっとコネ採用が多かったことは周知の通り.
「コネでも何でも,就職できればそれでいいじゃないか」という向きもあるだろう.しかし,リスクがあることも忘れてはならない.もし,公募ではなく,コネ採用にこだわる大学や研究所がもしあったとしたら,私の思うところでは,その最大のメリットは,その組織を批判することのできない「おとなしい人数」を増やすことだろうと思う.恩を売るのは,自派票を増やすきわめて確実な方法だ(もっと低級なケースでは,勤務条件外の雑用を押し付けられたり,個人的な見返りを暗に要求される場合さえありうるだろう).私は,公募で今の大学に内定したとき,念のため人事を担当した教授に電話をかけて,採用に当って学外の人物から意見を聞いたりしていないことを確かめた.誰かに恩を着せられるのなど真っ平だったからである.もし,そういうことがあれば,内定を断るつもりでいた.
私は.これからアカポスを得ようとしている若い人には,恩を売りたがる変な年寄りに振り回されることのないよう,自分の業績を武器に,真に評価をしてくれる研究組織を目指してほしいと思う.コネ就職がすべて駄目なわけではないが、安易な話に飛びつかず,大学名や組織名に惑わされず,よく相手の人物と実績を見極める目を養ってほしい.