チリメンカワニナの模式標本を見に名古屋のTさん来室。チリメンカワニナの記載論文は情報が非常に乏しいのだけれど、模式産地の近くと思われる地域をまめに探し回って、どういうタイプの貝が分布しているかをかなり突き止めている。
ところで、チリメンカワニナという貝の中には遺伝的に異なる複数種が含まれているのだが、模式産地の周辺にもやはり少なくとも2種がいて、胎貝形態が若干異なるらしい。すると、模式標本はどちらなのかという話になるが、昔の貝の標本というのは(当然のことながら)貝殻しか残っていないので(よくてフタつき)、こういう隠蔽種を見分ける識別点がない。おそらくネオタイプを指定しなければならないのだろうが、元のタイプを破棄するには(それが分類の役に立たないという)よほどの根拠をそろえて審議会に申請するしかないらしい。ああ面倒な貝だ。