陸水学会1日目

長年幽霊会員だった陸水学会の大会参加のため大阪教育大へ。今回は発表はしないので,聞くだけである。
陸水学会というと,かつては水道局や衛生研究所などの地方自治体の研究者などが多くいたものだが,最近はすっかり大学中心になったようだ。現場重視の学会として,応用生態工学会や水環境学会ができたせいだろうか,陸水の方はずいぶんアカデミックになった感じがする。久しぶりに出席してみると,勉強することがとても多い。それから,久々に会う人の顔もとても多い。
土木件のA野上席研究員その他のチームは,ヒゲナガカワトビケラ安定同位体比について。虫の食べる有機物源として生活排水,農耕地,樹木起源の有機物の比率が試算されていた。前にも書いたMarcoglieseらの論文のように,あとはたとえば生活排水によるNの負荷量の絶対量がわかれば,トビケラにおける二次生産量が推定できるわけだ。下水処理場などが近くにあって,Nの流入量がわかる水域で生物の安定同位体比を計る,というのが,やはりもっとも簡便に河川での二次生産を推定する方法だろうか。
琵琶湖の農業濁水にともなう栄養塩の流下において,もっとも重要なのは非リン酸体のリン。泥粒子に吸着されている分だろう。しかし,それでも生活排水によるリンの負荷と比べて,そんなにすごいものでもないらしい(農業濁水は短期間しか排出されないし)。もっと問題がありそうなのは,シルトの堆積による水底の嫌気化で,とてもきれいなデータが出ていた(香川大グループの発表による)。来年の環境フィールドワークの参考になりそう。
午後は島根大のY口さんと落ち合って,松江のカワニナとタニシを見せてもらう。同定のほかに,学生実習で巻貝のフィルタリングの効果を見せられないかという相談であった。ちょうど大教大のK藤さん,龍谷大のU西さんもやってきて,しばらく貝談義に花が咲く。シジミに楯吸虫がいたら保存してもらうよう,Y口さんに依頼。
K藤さんから、カワシンジュガイが粘液採餌をしている可能性があるという話を聞かされる。カワシンジュガイの研究をしている方(名前は失念)が、貝の口(水管?)から長い粘液糸が出ていて、それをすーっと吸い込むのを目撃したそうだ。残念ながら写真などの証拠はないそうなのだが、もし本当なら面白い話だ。オオヘビガイが投網を打つ貝なら、これはハエナワを使う貝だ。
また、Y口さんとK籐さんが、カネツケシジミミトコンドリアDNAの分析結果について喧々諤々していた。島根大の結果と、K籐さんの卒業生がやった三重大での結果がかなり異なるらしい。シーケンス部位は一緒だというのだが、それならば島根と三重の「カネツケシジミ」は別物だという可能性が出てくる。次の貝類学会では「ホンモノカネツケ」とか「ニセカネツケ」という呼称が出てくるだろうな、きっと。
しかし,南彦根から大教大までは3時間弱もかかる。なんだか,福岡から来るのと時間的にはあまり変わらないような気がする。